「革製品でスエードとベロアってよく聞くけど違いってあるの?」
今回はそんな素朴な疑問に答えるべく、それぞれの特徴からお手入れ方法まで徹底的に解説していきます。
革製品は私たちの生活の中でも家具、衣服や財布などに使われており何かと触れる機会が多いですが、どんな種類、特徴があるかまでは分からないですよね。
この記事を読めば、スエードやベロアの違いがしっかり学ぶことができますよ!ぜひ最後まで読んでみて下さいね。
(アイキャッチ画像出典:https://unsplash.com/photos/bDXpJtd4IOE)
まずスエード、ベロアって何?どんな違いがあるの?

スエードとは
スエードとは革の裏面を起毛させたもののことで、豚革や仔牛革、やぎ革など薄く柔らかい生地を用いるのが特徴です。
生地が薄いので裏面に補強材を張り合わせてあるものも多いです。用途としては、手袋や靴、ソファなど幅広く使われていますね。

ベロアとは
海外では、スエードと一括りにされることも多いですが、日本では主に、大判の牛革の裏面を起毛させたもののことを言います。
また、ベロアには編物としての意味合いもあります。しかし、滑らかで光沢のある生地のことをベロアと呼ぶことも最近では多く、編物としてのベロアは曖昧な部分も多いです。
スエードとベロアはどちらも起毛させた革製品で、動物の種類が違うことが分かりました。次は、ベロアやスエードが革加工製品の中でどんな位置付けにあるのかを解説していきます。
スエードやベロアは起毛革という革加工製品
スエードやベロアは革素材の中でも大きな括りとして『起毛革』というものに分類されます。起毛革には2種類あり、裏面を毛羽立たせるものと表面を毛羽立たせるものに分かれます。
- 裏面を毛羽立たせる製法
表面が傷ついていても用いることができるので、表面を毛羽立たせたものよりも流通量が多いのが特徴です。(スエードやベロアはともに裏面を毛羽立たせたものに分類されます。)
- 表面を毛羽立たせる製法
表面に傷がついていないもので加工しなければならないため、裏面加工のものよりも貴重です。
ベロアやスエードが革加工製品の中でどんな位置付けかわかったところで、いよいよスエードとベロアの違いについて詳しく解説していきたいと思います。
スエードとベロアの語源の違い

スエードの語源
スエードの語源は「スウェーデン手袋」という意味のフランス語、「gants de Suède(ガンツ・デ・スエード)」からきています。
これは、スウェードの加工方法を開発したのがスウェーデンで、フランスがそのまま製法の名前とし、定着したと言われています。
ベロアの語源
ベロアの語源は「毛むくじゃら」という意味のラテン語、「holoserica(ホロセリセア)」からきています。
のちにフランス語で「velours(ヴルール)」と呼ばれるようになり、さらにそれを英語読みして、「velour(ベロア)」となりました。
スエードはフランス語なのに対し、ベロアは英語という語源の違いがありました。
とは言え、ベロアも成り立ちとして一度フランスを経由しているので、革製品のルーツがいかにヨーロッパに深く根付いているということが語源から分かりますよね。
スエードとベロアの違いは毛足の長さ
スエードの毛足

スエードの毛足は短く均質です。そのため光沢は強くなく、優しい温かさがあります。
ベロアと比べるとマットなイメージで、品があり、すっきりとした印象を与えてくれます。
ベロアの毛足

ベロアの革は成牛革を用いているため、繊維が粗く、起毛も粗いです。
なので、ベロアの毛足の長さはスエードと比べて長く、光がよく反射して深い光沢感があるのが特徴です。
スエードと比べると落ち着いて見え、深みのある印象を与えてくれます。
スエード、ベロアのお手入れ方法は同じ

使い始めのお手入れ
毛足の長さに違いがありますが、意外にもスエードとベロアのお手入れ方法に違いはありません。
お手入れする上で最も注意すべき点は、スエードとベロアの両方ともが水に弱い点です。
特にスエードは生地が薄く、水を浸透させやすいです。スエードとベロアを用いる製品を初めて使う際には防水スプレーを使用しましょう。
濡れたまま放置しておくとシミの原因になりますので、注意が必要です。
スエード、ベロアの日常ケア
使い始めてしばらく経ったら、日常ケアも忘れてはいけません。とは言え、スエード、ベロアの日常ケアは簡単なので、ぜひ覚えて下さいね。
起毛革はホコリがつきやすいので、毛に逆らってブラッシングをします。ホコリを落としたら、毛の流れに沿ってブラッシングしましょう。
そうすることで、小さなゴミは落ち、風合いを保つことができます。
ブラッシングが終わったら最後に防水スプレーをして、お手入れ完了です。
手入れが大変な場合は業者に任せた方がよい
簡単にお手入れ方法を紹介しましたが、実際、革製品の中でもソファなどの大型家具はお手入れするのも一苦労ということもありますよね。
そんな時は、無理にメンテナンスせず、業者に依頼するのをオススメします。
自分で、知識のないままお手入れをして、ひどくなってしまうことも防げますし、何より革のプロがメンテナンスをしてくれるので自分でお手入れするよりも長く家具を使うことができます。
家具を買った際に、メンテナンスのサービスを展開している家具屋さんもありますので、購入の際には確認しておきましょう。
スエード、ベロア以外にもある起毛革の違い①バックスキン
続いては、スエードやベロアと同じ起毛革で、混同しやすい他の種類についても紹介していきます。まずはじめにご紹介するのは、バックスキンです。

バックスキンは、雄鹿の革の表面を削って毛羽立たせた革のことを指します。
バックスキンの語源は、「バック」は「back(後ろ)」ではなく「雄鹿」という意味の「buck」。
鹿革は牛革に比べ、柔らかく柔軟性があるので、形崩れしにくく耐久性に優れているのが特徴です。
鹿革は柔らかいので傷つきやすいという特徴がありますが、削って起毛させることで弱点をカバーしています。
スエード、ベロア以外にもある起毛革の違い②ヌバック

ヌバックとは、製法としてはバックスキンと同じですが、牛革の表面を削って毛羽立たせた革のことを指します。
表面を削るので革の厚みが残っており、スエードよりも丈夫なのが特徴です。
ヌバックは起毛革ながら、さらっとした手触り、深い光沢感があり、ヨーロッパでは高級家具に使用されています。
もともと革製品は鹿革の流通が多かったのですが、鹿ではなく牛革で、表面を削って加工したところ「鹿に変わる新しい革製品」として広まりました。
のちに「newbuck(ニューバック)」「neobuck(ネオバック)」などと言われ、そこから転じて「ヌバック」となったと言われています。
製法はバックスキンと同じなので、バックスキン=鹿、ヌバック=牛と覚えておきましょう。

家具におけるスエード、ベロアの違い
スエードとベロアの違いとして毛足の長さの違いがありますが、家具での違いがわかるものを集めてみました。ぜひ、家具選びの参考にしてみてください。
ベロアのソファを使ったインテリアコーディネート
こちらは、ベロアを用いたソファの例です。深い光沢が、部屋全体にレトロな空気感をもたらしています。シンプルな部屋にしっかりとした存在感が非常にかっこいい例ですね。
スエードのソファを使ったインテリアコーディネート
こちらはスエードを用いたソファの例です。ベロアよりも光沢が落ち着いており、カジュアルな印象になっています。そのため、ベロアよりもあらゆる雰囲気に合わせることができそうです。
あなたに好みに合っているのはスエードかベロア、どちらの起毛革でしょうか?
スエードとベロアの違いまとめ
ここまで、スエードとベロアの違いについて解説してきました。内容を以下にまとめました。
- スエードは豚やヤギの革を用い、ベロアは成牛の革を用いる
- スエードはフランス語だが、ベロアは英語
- スエードに比べるとベロアの毛足の方が長い
- スエードに比べるとベロアの厚さの方が厚い
- お手入れ方法は変わらない
スエードとベロアは、お手入れも簡単で安価でありながら、非常に存在感のある素材です。
ぜひスエードやベロアのような起毛素材を用いた家具を選んでみてはいかがでしょうか。きっと普段の生活をもっと華やかなものにしてくれること間違いありません。