最高級の絨毯として知られる『ペルシャ絨毯』。高級な質感と美しいデザインからインテリアとしても重宝され、世界各国にはコレクターまでも存在します。
そんなペルシャ絨毯に興味を持っているあなたは、「ペルシャ絨毯ってどこで作られているの」「どんなデザインがあるのかな」と、様々な疑問が浮かぶのではないでしょうか?
今回は、高級絨毯の代名詞『ペルシャ絨毯』の特徴について分かりやすく解説していきます。ペルシャ絨毯を選ぶときのポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2656490?title=ペルシャ絨毯&searchId=97135466#)
日本とペルシャ絨毯の歴史は長くて深い
日本とペルシャ絨毯の歴史は長く、日本に伝来したのは安土桃山時代と言われています。
ペルシャ絨毯は、当時のシルクロードと中国を経て伝わってきたと考えられており、かの有名な豊臣秀吉が纏った「陣羽織(じんばおり)」も絨毯を裁断して作られたとされています。
また、京都の祇園祭に使われる「山鉾(やまぼこ)」には、懸装品(けそうひん)としてペルシャ絨毯が使われているなど日本の歴史や文化に深く関わる伝統的な絨毯なのです。
イランの美術工芸品『ペルシャ絨毯』とは?
高い知名度がありながらも、意外と詳細を知られていない『ペルシャ絨毯』。この章では、ペルシャ絨毯がどのようなものなのか簡潔に紹介します。
ペルシャ絨毯とは、イラン国内で制作された手織りの絨毯です。正確な起源は特定されていませんが、3,000年以上の歴史を持つ「最古の絨毯」として知られています。
主に「ウール」を使って作られており、「花」「動物」「幾何学模様」など様々なデザインがあるのも特徴の1つです。
また、ペルシャ絨毯は実用性にも優れており、「50年以上使える耐久性」「使い込む込むほど味わいが出る」「ほつれや穴ができても修繕できる」といった魅力も兼ね備えています。
日本でも有名な『ペルシャ絨毯』はどこで生産されている?
イランにとってペルシャ絨毯は、大きな産業の1つであり伝統文化でもあることから、国内全土に渡って生産が行われています。
ローカルな生産地域も多いですが、ペルシャ絨毯には“五大産地”と言われる5つの地域が存在します。
ペルシャ絨毯において必ず名前が挙がる名産地なので、今回を機にぜひ覚えておきましょう。
エスファン
エスファン(イスファン)は、中部高原地帯にある都市。紡糸技術・色彩・デザインの全てに優れており、上質なペルシャ絨毯の産地として知られています。
エスファン産のペルシャ絨毯は、「ウール」の素材を基本とし、縦糸に「シルク」を使っているのも特徴の1つです。
ナイン
ナインは、エスファンの北東部郊外にある都市。本格的に生産を始めたのは1920年代からで、ペルシャ絨毯の中では歴史が浅い産地となります。
ナイン産のペルシャ絨毯は、「ベージュ」「クリーム」「濃紺」などの色彩を基調としているのが特徴です。
タブリーズ
タブリーズは、ビザンティン様式の「青のモスク」があるイラン北西部にある都市。日本でも認知度が高い名産地の1つです。
タブリーズ産のペルシャ絨毯は、伝統的な色彩を守りつつ、バラエティーに富んだデザインと緻密(ちみつ)に織られているのが特徴です。
クム
クム(コム)は、日本で最も知名度が高いペルシャ絨毯の産地。伝統的なデザインだけではなく、海外市場や時代の流れを捉え、最良のデザインを取り入れているのも特徴の1つです。
クム産のペルシャ絨毯は、「シルク製」のものが多く、近年は「オールシルク」の絨毯の産地として名を馳せています。
カーシャン
カーシャン(カシャーン、カシャン)は、中北部の乾燥地帯にある伝統工芸の町です。ペルシャ絨毯の歴史は長く、「正統派」のデザインを守っているのが特徴の1つです。
カーシャン産のペルシャ絨毯は、「メダリオン」「アラベスク文様」といった定番デザインが多く、色は「赤」や「ベージュ」が基本となります。
最高級の敷物『ペルシャ絨毯』にはどんな素材が使われている?
“最高級”と称されるペルシャ絨毯となれば、どのような素材が使われているのか気になるところですよね。
ペルシャ絨毯には、主に3つの天然素材が使用されています。
- ウール
- シルク
- コットン
ペルシャ絨毯の素材として、最も多く使用されているのが「ウール」。イランの乾燥した風土で育った羊の毛は、弾力性に富んだ強靭な素材として定評があります。
耐久性に優れており、踏まれても長持ちするので、敷物として使う場合にはウールのペルシャ絨毯がおすすめです。
ペルシャ絨毯にはどんなデザインがある?
ペルシャ絨毯の特徴の1つが、バラエティーに富んだデザイン(文様)です。
ペルシャ絨毯のデザインは、素材と同様に各産地によって大きく異なります。代表的なデザインとしては、以下のようなものが挙げられます。
- アラベスク文様
- イスリム文様
- 糸杉文様
- 隠し絵文様
また、ペルシャ絨毯の印象は、全体のデザイン構成によっても大きく変わります。
最も有名なデザイン構成としては、絨毯の中央にシンボルデザインを配する「メダリオン」が挙げられます。
一概にペルシャ絨毯と言っても、様々な文様・デザイン構成が存在するため、飽きることなく楽しめるのも魅力の1つです。
ペルシャ絨毯専門店「Fleurir(フルーリア)」のサイトでは、写真と共にデザインの詳細を解説しているので、こちらもぜひ参考にして頂ければ思います。
ペルシャ絨毯の大きさはまちまち!主なサイズと呼び名
ペルシャ絨毯を見ていると、「何故、サイズが揃っていないんだろう」と疑問に感じることもあるでしょう。
先程も紹介したように、ペルシャ絨毯は手織りで作られているため、絨毯の大きさもまちまちとなります。
尚、ペルシャ絨毯のおおよその大きさとして、以下のようにサイズが分類されています。
- ポシュティ:約60cm×90cm
- ザロチャラケ:約80cm×120cm
- ザロニム:約100cm×150cm
- ハフトチャラク:約120cm×180cm
- ドザール:約140cm×210cm
- パルデ:約160cm×260cm
- キャレギ:約200cm×300cm〜約250cm×350cm
- ガリ:キャレギより大きいサイズ
産地によってサイズに差異があるので、目安として参考にして頂ければと思います。
ペルシャ絨毯は偽装品も多い?注意するべきポイント
見惚れてしまうほど存在感のあるペルシャ絨毯ですが、残念ながら偽造品が出回っているのも事実です。
また、偽造品ではないにしても、異常とも言えるような高値で販売しているケースもあります。
とは言え、知識が浅いと見極めることも難しいので、以下のようなポイントには最低限注意しておきましょう。
- 「機械織」または「イラン以外」で生産された絨毯はペルシャ絨毯ではない
- 産地を偽装したコピー製品があることを理解しておく
- 偽の工房サインが後付けされた偽装品があることを理解しておく
- 豪華な付属品・鑑定賞はペルシャ絨毯の価値に関係しない
- セールなどのおいしい話には裏がある可能性がある
品質や相場を見極めるためには知識が必要となりますが、知識が浅いからと言って、目の前にある情報や絨毯商の話を鵜呑みのしないことが大切です。
目が肥えるまでには時間も掛かると思いますが、良い絨毯商(専門知識が豊富で鑑識眼に優れた人)と付き合うことが絨毯選びに失敗しない最適な方法です。
見極めは難しい!上質なペルシャ絨毯の選び方
前章では、“偽装品には注意が必要”と紹介しましたが、そうなると「どんなペルシャ絨毯が良い製品なの」と気になるかと思います。
高級絨毯と言えば、“毛足が長くて光沢感があるもの”と想像してしまいがちですが、ペルシャ絨毯にはその概念が当てはまりません。
尚、ペルシャ絨毯の善し悪しは、以下のようなポイントで判断されています。
- ノットの密度
- ラインが正確に出ているデザイン
- 素材や染料の質
- 仕上がりの良さ(全体的な美しさなど)
1つの目安となるのが「ノット数」で、1㎡の中のノット数が110万個以上あれば“最高級のペルシャ絨毯”に該当するとされています。
ノット:繊維の密度を表す単位。一般に1c㎡の中の縦×横の結び目を数えて算出される。
つまり、「値段が高い」「五大産地」だから“価値のあるペルシャ絨毯”という訳ではなく、あくまでもペルシャ絨毯の品質・状態によって価値が決まります。
とは言え、品質や年代などに拘っていると、どれを選べば良いのか分からなくなるものです。
ペルシャ絨毯を選ぶときに大切なのは、自分の好みを認識しておくことであり、自分の感性を大切にして作品と向き合うようにしましょう。
ペルシャ絨毯を使ったインテリアの例
最後に、ペルシャ絨毯を使ったインテリアの例を3つ紹介します。
ペルシャ絨毯は、敷く場所や使い方を変えるだけで部屋の印象も大きく変わります。これからペルシャ絨毯を使う方は、ぜひ参考にしてみてください。
リビングに敷く場合
最もペルシャ絨毯が敷かれるのは、生活の中で利用頻度が多いリビングです。
ペルシャ絨毯を部屋に敷くことで、リビングの印象がより華やかになります。
尚、家具の下に敷く場合や人が乗る機会が多い場合は、摩擦に強く耐久性の高いウール素材のペルシャ絨毯がおすすめです。
和室に敷く場合
近年は、和室に絨毯を敷く方も増えてきており、ペルシャ絨毯を敷くことでモダンテイストな空間へ変えることができます。
尚、ペルシャ絨毯は天然素材を使っているので、通気性が良く畳の上でも使いやすいメリットもあります。
タペストリーとして使う場合
華やかな柄を持つペルシャ絨毯は、敷物としてだけではなく、タペストリーとして使われることも多いです。
タペストリーとして使う場合は、高級感のあるシルク素材のペルシャ絨毯を使うのもおすすめです。
高級絨毯の代名詞『ペルシャ絨毯』のまとめ
今回は、ペルシャ絨毯の特徴や選び方のポイントなどを紹介しました。改めて紹介した内容を簡単にまとめてみます。
- ペルシャ絨毯は「イラン国内で作られた手織りの絨毯」である
- “五大産地”と呼ばれる名産地が存在する
- 素材は「ウール」「シルク」「コットン」
- 生産地によって文様・デザイン構成の特徴が変わる
- 大きさはまちまちだが大まかなサイズの分類がある
- 情報や絨毯商の話を鵜呑みにしない(偽装品があることも心得ておく)
- 値段や産地ではなく、絨毯の品質に注目する
- 1㎡の中のノット数が110万個以上ある絨毯は“最高級のペルシャ絨毯”に当たる
- 絨毯の善し悪しも大切だが、自分の好みを認識して感性で選ぶことも大切
この記事を参考にして頂きながら、自分好みの素敵なペルシャ絨毯を見つけ出してみてくださいね。
